こんにちは!新潟市の税理士川畑です!
確定申告がやってきて、計算をしてみると思いのほか利益が出ている。
周りからは「法人にした方が良いんじゃない?」と言われる。
でも、果たして法人にすることが本当に良いのだろうか・・・
って考えるタイミングなんですよね、この時期は。
今の流れ
日本の法人の実効税率は諸外国に比べて、高いと良く言われます。
国際競争力を高める為にも法人の税率を下げる方向に動いています。
一方で、所得税や相続税は増税傾向ですよね。
あと、消費税は2年間かかりませんね。
個人事業主を2年やって法人成りにすると計4年間かからない、ってよく聞きませんか?
しかも、消費税が8%から10%になろうとしています。
これだけでも、なんとなく法人成りのメリットはありそうですよね。
法人成りのメリット
1.信用力アップ
2.消費税2期免除
3.赤字9年間繰越可能
4.決算日を自由に設定可能
5.節税対策がしやすい
法人成りのデメリット
1.設立費用が必要
2.赤字でも納めないといけない税金がある
3.社会保険へ強制加入
4.経理事務負担の増大
5.ランニングコスト増大
法人成りによる節税対策
法人成りのメリットに、「節税対策がしやすい」と書きました。
簡単に言うと、個人ではダメだけど法人ならイイよっていう経費があるからです。
具体的に見てみましょう。
1.生命保険
個人では、生命保険料控除として確定申告の時に最大で12万円控除できるだけでした。
法人では、法人を契約者として生命保険に加入でき、経費として計上することができます。
ただし、全額が経費となるわけではなく、商品によってその割合は異なります。
2.出張手当
法人では、規程を作り、適切な額であれば、出張手当を支給することができます。
しかもこの出張手当は所得税がかかりません。
国内出張が1日当たり5,000円だったとして、年間100日あれば、50万円も無税でお金を法人から個人に移すことができます。
そしてこの50万円については、会社では立派な経費となります。
つまり、税率30%だとすると、約15万円の法人税の節税になるわけです。
3.社宅
法人名義で社宅を賃借し、それを役員に貸し付ければ、役員の負担すべき金額はかなり少なくて済みます。
そして、その差額は、法人の経費となります。
4.退職金
個人の場合は、退職金なんかありません。
小規模企業共済に加入していれば別ですが。
法人の場合は、「最終報酬月額×役員在位年数×役員別功績倍率+功労加算金」まで出すことができます。
例えば、月額100万円、役員在位年数30年、功績倍率3、功労加算金0とすると、9,000万円まで退職金を支払うことができます。
しかも、退職金は、今後の老後の生活資金という性質がありますので、税金を計算するうえで非常に有利なんです。
退職所得は、「(額面退職金ー退職所得控除)×1/2」で計算します。
ここで注目してほしいのが、「1/2」です。
所得控除後、さらに1/2するので税金がかなり安くなります。
だから、給与でもらうよりも退職金でもらった方が有利なんですね。
退職金については、法人成りしたら儲かるって話ではなく、事業が順調に行けば、こういうこともあるということです。
また、金額が大きすぎたので、現実味が無いかもしれませんが、ここでは、金額というよりも過程に着目してみます。
個人の場合、所得が出たとして出た分だけ、税金がかかります。
一方で法人の場合は、退職金でもらった方が有利なんで、退職金の積み立て用に、わざと一定期間役員報酬を下げておきます。
このままだと利益は増えて、法人税がかかるので、その分生命保険等を活用します。
ということで、法人の方が節税の手段が多いわけですね。
5.税金の計算の違い
個人の所得は収入から経費を差し引いた所得を基に計算します。
これは、青色申告決算書であれば「33差引金額」、収支内訳書であれば「19専従者控除前の所得金額」のことです。
法人成りして役員報酬をもらった場合の所得は、給与から給与所得控除を差し引いた所得を基に計算します。
この給与所得控除が大きく節税に影響します。
十人十色
じゃあ、なんでもかんでも法人成りをすれば良いのかというと、そうではありません。
その人が置かれている状況により様々です。
これが、法人成りを考えるときに悩む点なのですが・・・
というのも、税金っていうと所得税、法人税、住民税、消費税などがありますが、社会保険料も忘れてはなりません。
例えば、個人事業主で従業員数が5人未満だと社会保険への加入は強制されません。
しかし、法人成りすることで、社会保険に強制加入となってしまいます。
例えば従業員数1人で、月25万円、年間300万円の給与を支払っていたとすると、45万円の社会保険料の会社負担が発生することになります。
これが従業員数が3人だと3倍の135万円です。
また、配偶者に給与を支払うのかどうかでも法人成りの有利判定の結果は違ってきます。
ということで、所得、配偶者、従業員数などから総合的に勘案して検討することが大切です。
まとめ
法人成りにするとメリット・デメリットがあります。
ご自身が置かれている状況をしっかりと把握したうえで、法人成りについて考えてみましょう。