こんにちは!税理士の川畑です!
相続税の計算方法はちょっと特殊です。
「不動産3,000万円を相続したのですが、相続税はいくらかかりますか?」
このご質問の回答はなかなか難しいんですね。
なぜでしょうか?
相続税の計算の流れ
相続税はザックリ5ステップで計算します。
1.プラスの財産とマイナスの財産を集計して、相続財産の純額を求めます。
2.相続財産から基礎控除を差し引きます。
3.「仮に」法定相続分で相続したものとして2の金額を配分します。
4.配分された金額に、相続税の税率をかけて、各相続人の相続税を求めてから、全員の相続税を合計します。
5.実際に相続した割合に応じて納税額を求めます。
全ての相続財産を把握しなければならない
気付きましたか?
相続税を計算する為には、一旦全ての相続財産を把握しなければ求めることができません。
従って、「不動産3,000万円を相続したのですが、相続税はいくらかかりますか?」って、突然聞かれても答えられないわけですね。
なぜ、こんな面倒くさい計算方法を採用しているかというと、相続財産の分け方によって、相続税の有利不利がないようにする為です。
相続財産の分け方が相続税に大きな影響を与えるとなると、本来の家族の考えと異なるものになってしまうと良くないですからね。
しかし、2つだけ相続税に影響を与える相続財産の分け方があります。
それは、「小規模宅地等の特例」と「配偶者の税額軽減」です。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、被相続人が(亡くなった方)が自宅として使っていた土地は、配偶者か被相続人(亡くなった方)と同居していた親族が相続した場合、土地を20%で評価できる制度です。
例えば、本来評価額が5,000万円の土地であっても、小規模宅地等の特例を活用することで1,000万円となり、4,000万円も評価が下がるのです。
この特例を活用することで相続税が0円になることもあるのですが、相続税の申告が要件となっていますので、申告を忘れないようにしないといけませんね。
しかし、誰が相続するかによって注意点がありますので、適用できるかどうかは、専門家に確認して下さい。
配偶者が相続した場合は、無条件で適用できます。
同居している親族は、要件をしっかり確認しましょう。
同居期間に制限はありませんが、相続税の申告期限まで、その自宅に継続して住み続けなければなりません。
この同居は、単に住民票のことを指しているわけではありません。
税法はあくまでも実態がどうだったかで判断します。
そして、配偶者も同居している親族もいない場合は、3年以上借家暮らしをしていた親族が相続した場合も適用できます。
いわゆる「家なき子特例」です。
この場合は、申告期限まで売却してはいけません。
配偶者の税額軽減
配偶者の税額軽減とは、配偶者が相続した場合は、最低1億6,000万円までは相続税がかからない制度です。
基本的に、夫婦で協力して築き上げてきた財産なので、夫婦間の相続には相続税をかけるのはかわいそうですよね、ということです。
「最低1億6,000万円」ということは、もっと多くても相続税がかからないこともあります。
厳密には、「1億6,000万円」と「配偶者の法定相続分」のいずれか大きい方です。
従って、4億円の相続財産があった場合は、4億円×1/2(配偶者の法定相続分)=2億円までは相続税がかかりません。
非常に有利な気はしますが、二次相続まで考えると損をすることがあります。
夫婦で考えた場合、どちらか一方が先に亡くなるのを一次相続、残された方が亡くなるのを二次相続と呼びます。
例えば、父、母、長男、長女の4人家族で父が亡くなった場合(一次相続)、法定相続人は3人です。
しかし、次に母が亡くなった場合(二次相続)、法定相続人は2人です。
つまり、基礎控除額が減ってしまい、二次相続で多額の相続税がかかる場合があります。
そうならない為にも、敢えて一時相続で母があまり相続しないケースもあります。
忘れないでほしいこと
私は税理士なので、税金の話をメインにしましたが、相続において一番大切なことは、残された相続人が、その後の人生も仲良く生活していくことだと考えています。
相続税を節税する為に、敢えて一次相続で母が相続しないことを伝えましたが、母の気持ちを考えると、本当に良いのかは疑問が残ります。
夫に先立たれ、残りの人生の生活費の原資となる相続分が少なくなると、不安になろうかと思います。
例えば、長男に多く相続させるので、老後の生活を面倒見て欲しいと思っても、本当に長男が約束通りにしてくれるとは限りません。
それであれば、多少相続税を支払ったとしても、母が気持ちよく生きていく道を選ぶこともありなのではないでしょうか。
まとめ
相続財産を分ける時、「自宅は誰が相続するのか?」、「配偶者はいくら相続するのか?」を覚えておくと、節税に繋がります。
しかし、皆さんが揉めることなく、仲良く生活できる方法を第一に検討してみて下さい。